mizunowa48
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日頃は日本下水道事業団研修事業にご理解とご協力を賜り、心より感謝申し上げます。平成26年度はJS運営補助金の皆減に伴って、研修の受講料の大幅な値上げを行ったにも関わらず、多くの受講生の皆様のご参加を頂き、重ねてお礼申し上げます。*    *    *さて、下水道の世界でも「建設から維持管理(経営)の時代に」と言われて、久しくなります。事実、全国の下水道資産(粗資本ストックベース)は約80兆円を超え、その適正な維持と効率的な機能発揮、すなわち「持続的な経営」を目指した「経営戦略の策定」は、下水道管理者にとっては、喫緊の課題となっています。では、私たちが何気なく使っている「経営戦略」とは、いったい何なのでしょうか。経営戦略は、「不確実性の高い事業環境において、事業体が目的(継続して事業を営む、成長する、収益を獲得・拡大する等)を達成するために必要となる打ち手(手段より上位の概念)」と言われています。この50年の経営戦略の流れは、1960年代に始まったポジショニング派が80年代までは圧倒的で、それ以降はケイパビリティ派が優勢となりました。ポジショニング論はマイケル・ポーターが、「外部環境が重要であり、儲かる市場で儲かる立場を先に占めれば勝てる」と主張した考えです。一方、ケイパビリティ論はジェイ・バーニーが「企業の内部環境が重要であり、自社の強みを生かして戦えば勝てる」と主張した考えです。21世紀に入ると、経済、経営環境の変化や技術革新のスピードは劇的に上がり、新たにアダプティブ戦略という「試行錯誤を行い、その結果をもってポジショニングかケイパビリティで戦うか決める」手法も出現し、まさに百花繚乱状態です。では、下水道事業の世界では、どのような企業戦略が必要なのでしょうか。外部環境で考えると、施設建設の時代には競合汚水処理施設との棲み分けという競争関係はありましたが、経営の時代に入ると、独占企業としての位置付けが明確になりました。また、外部環境は、人口減少による顧客の減少、自治体の財政悪化など緩慢な変化となります。このため、むしろ内部環境である企業体の強みを生かす経営戦略を取ることが市場に適していると言えます。したがって、事業体の強み、特徴等を洗い出すことが重要となります。具体的な施策としては、処理水、汚泥、空間等を利用したサービス向上・収入増加、保有する技術・ノウハウ、その他資源の国内外への展開による収益などがあります。一方で、個別事業体の経費縮減は当然として、近隣自治体での広域化、包括化、多機能化などによるスケールメリットの創出も重要と言えます。国においても、平成26年度に「新下水道ビジョン」が報告され、現在、社会資本整備審議会においても下水道小委員会が設置され、新たな制度が検討されています。このように、下水道事業すなわちマーケットの方向性が大きく変わろうとしています。これらを受け、JS研修ではこの新たな動きを迅速、的確に捉え、アセットマネジメントや経営の研修を実施しています。最後に、JS研修参加の機会を捉え、将来のあなたの街の下水道経営戦略をじっくり考えることを、ご提案して稿を閉じさせて頂きます。参考文献:経営戦略全史 三谷宏治 Discover21社第48号研修みずのわ(1)巻頭言「下水道事業の経営戦略とは…」日本下水道事業団 理事野村 充伸

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