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8/12 地方公営企業法

【テロップ】
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【ノート】
なぜ地方公営企業においては、官公庁会計では十分対応できないのでしょうか。 一般会計における主な歳入財源である税収等は、法律により徴収された対価性のない財源であり、歳出の一般行政経費との間に「必要経費を利用料金で賄う」という関係がありません。そのため、その収益を得るためいくらの費用を要したかという「経営成績」を算出する会計上の仕組みが必要ありません。官公庁会計における現金主義、単式簿記は、そのような前提に立った会計手法です。 その代わり、一般行政経費に係る歳出については、議会の議決等の厳格な手続きによって、歳入の枠内で、どのような使い道をするかという政治的な決定がなされます。そして、こういう背景から、財政規律・歳出抑制が重視されています。厳格な予算制度に縛られて予算を超えた支出などありえないわけです。 これに対し、公営企業は「必要経費を利用料金で賄う」ことが要求されます。 そのため、収益とその収益を得るためいくら費用を要したかの「経営成績」を公営企業会計により明らかにする必要があります。公営企業会計は、発生主義、複式簿記による経理方式を採用することにより、経営成績等を明らかにすることができるものです。 また、収益の増加は費用の増加を伴います。予算で費用の支出を縛るというのは収益の道を閉ざす一面もあるといえます。 そのため、特に一般会計からの繰入れをあてにしない公営企業にあっては、厳格な財政規律・歳出抑制より、効率的な運営を重視しようという観点から、予算の弾力化などが必要となります。予算の弾力化とは、業務量が増加して業務に直接必要な経費に不足を生じた場合に、その業務量に応じて増加した収入の限度で、議会の議決を経ずに業務に直接必要な経費に使用できるというものです。 効率的な経営という観点からも財政規律・歳出抑制を重視する地方自治法等では、公営企業の目的を十分に達成することが難しいことになるわけです。 最近、ガバナンスの観点から「経営成績や財政状況の明確化」が、大きな社会的要請とされています。しかし、現金主義、単式簿記を定めた地方自治法の世界では、この要請に十分こたえることができないわけです。 そこで、地方公営企業法が地方自治法等の特例を定めて、公営企業会計を導入しているわけです。特に一般会計等からの繰入に頼らない公営企業では、地方自治法などによる財政規律・歳出抑制はあまり必要がなく、むしろ効率的かつ健全な企業運営を目指す必要が高いわけですので、これらの公営企業を当然適用の対象としているのです。